坐りになりました。そうして両手を支《つか》えながら、
「ハイ……」
と云い云い私の打たれた頬と、お父様のお顔とを見比べておいでになりました。けれどもまだ涙はお見せになりませんでした。
「もっとこっちへ寄れッ」
とお父様は押しつけるように云われました。
「ハイ……」
とお母様はしとやかにお進みになって、丁度十畳のお座敷のまん中近くまで来て又、三ツ指をおつきになりました。
お父様は黙ってお母様の顔を睨んでおいでになるようでしたが、私はお母様の方に向けられて足を投げ出したまま、帯際をしっかりと捉えられておりましたので見えませんでした。
お母様も一心に、お父様の顔を見ておいでになりましたが、その大きな美しい眼で二度ほどパチパチと瞬《まばたき》をされました。
「……キ……貴様は……ナ……中村半太夫と不義をした覚えがあろう」
というお父様の声が、間もなく私のうしろから雷のように響きました。私の帯を掴んでおられるお父様の手がブルブルとふるえました。
「あっ……まあ……」
とお母様は眼を大きくして驚きさま、うしろ手をつかれましたが、たちまち膝の前に両袖を重ねてワッと泣き伏しておしまいにな
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