りました。
お父様は黙ってその姿を見ておいでになる御様子でしたが、暫くして又今度は低い押しつけるような声で、静かに云われました。
「おぼえがあろうの……」
「エエッ……ぞんじがけもない……夢にも……マア」
とお母様は青白い顔と、紅くなった眼をお上げになりました。
「黙れっ」
とお父様のお声は又、雷のように私のうしろからはためきました。私の右の耳がジイーンと鳴る位でした。
「おぼえがないとて証拠があるぞッ」
お母様はそう云われるお父様のお顔をジッと御覧になりながら、飛白《かすり》の前垂れの上に両手をチャンと重ねて、無理に気を落ちつけようとしておられるようでしたが、その悩ましくも痛々しいお姿を私は死んでも忘れますまい。けれどもお母様のお声はいつもと違って、ふるえてカスレておりました。
「……ど……どのような……」
「黙れ黙れッ。どのようなとは白々《しらじら》しい……あの櫛田神社の犬塚信乃の押絵の顔は誰に似せて作ったッ」
お母様は長い長い溜め息をホーッとなされました。静かに私の顔を見ながら云われました。
「そのトシ子に肖《に》せて作りました」
「そのトシ子の……こやつの顔は誰に似て
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