《からだ》におなりになりませぬうちに、私が亡くなりますようなことが御座いましたならば、済みませぬが唯一度でよろしう御座いますから私のお墓にお参り下さいまして、お出来になりますことなら多くの花よりも、あの花菖蒲をお手向《たむ》けになって下さいませ。お母様がお斬られになった時に、お座敷の前に咲いておりました思い出の花で御座いますから……。
どうぞどうぞお願い致します。決して御無理をなさいませぬように……そんな事を遊ばしたことがわかりましたならば、私は、その上の御無理をおさせ申しませんように覚悟致しているので御座いますから……。
せめて、お兄様だけでも、御無事にこの世に生き残って頂きまして、お母様の芸術をこの世にあらわして下さいますようにと、そればかりをお祈りしているので御座いますから……。
けれどももしそうで御座いませんでしたならば、お兄様と私とが、血を分けた兄妹《きょうだい》で御座いませんでしたならば……ホントウにあなたのお父様と、私のお母様の、せつないお心の形見で御座いましたならば……。
ああ……私はどう致しましょう……。
あなたのお父様と、私のお母様の恋は、世にも上なく清浄
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