なもので御座いました。
 そうして永久に気高いもので御座いました。
 どうぞどうぞお兄さまと私の恋も、そのようにいつまでも気高く、清浄に、悲しくておわりますように……。
 今一度お眼にかかりたい……と思いますと、私は又しても狂おしい心地にせめられます。けれども、このような思いすらも、お二方《ふたかた》の恋の気高さに比べますと、お恥かしい、汚らわしいもののように思われまして……。
 思いが乱れまして、もう筆が進みませぬ。お名残《なご》り惜しう存じます。
[#地から3字上げ]あらあらかしこ
   明治三十五年三月二十九日
[#地から2字上げ]井の口トシ子より
     菱田新太郎様
           みもとに



底本:「夢野久作全集3」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年8月24日第1刷発行
底本の親本:「日本探偵小説全集 第十一篇 夢野久作集」改造社
   1929(昭和4)年12月3日発行
※底本にある表記の不統一(「柴忠」と「芝忠」、「鷹が宿」と「鷹の宿」、「井ノ口」と「井の口」)には、手を加えなかった。
入力:柴田卓治
校正:おのしげひこ
2000年5月22日公
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