した不思議について何かしら、心の奥深くに思い当っておいでになったに違いないのでした。あの櫛田神社の絵馬堂に奉納されました額ぶちの外題《げだい》に「三国志」をと仰有った柴忠さんの御註文を避けて、わざと「芳流閣上の二犬士」の場面をお作りになった、お母様のお心の底には、ついこの間、私が伏姫《ふせひめ》様のお話を見ました時に思い当りましたのと同じような驚きと喜びが、云うに云われぬ母親の悲しみと一緒に、人知れず潜み隠れていなかったとどうして考えられましょう。その頃の福岡の士族の家庭にはオキマリのように一部ずつ備え附けてありました八犬伝のお話を、お母様だけが御存じなかったと、どうして思われましょう。……そうしてそのような恐ろしい、悩ましい不思議さを明け暮れ胸に秘めておいでになったればこそ、お母様はあのように思い切って、お父様の御成敗をお受けになったのではないでしょうか。私が正《まさ》しく、うちのお父様の血を引いた娘であることを御存じになりながらも、そうした不思議を思い当っておいでになったればこそ、あのように何一つ、お申し開きをなさらなかったのではないでしょうか……。
 ああ。思うも気高い……おそろ
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