二なる事を各方面より詳細に亘りて論断し、更に進んで前掲、希臘《ギリシャ》国、某王妃の例を挙げて、かかる事例が存在の可能なる事を説破したる後《のち》、一段と語気を強めて云いけるよう、
「近く、吾が英国に於ても遺伝学上、かかる現象の存在し得ることを証明し得べき実例あり。最近ラッドレー附近の一種馬場に於て飼育せられし一|牝馬《ひんば》は、今より三年以前に見世物用の斑馬《はんば》と交尾して一匹の混血児《あいのこ》を生み、飼主をして奇利を博せしめし事あり。然るにそれより二年後の昨年度に於て該《がい》牝馬を普通の乗馬と交尾せしめたるに、奇怪にも、以前の配偶たりし斑馬と同様の斑紋を臀部より大腿部にかけて止《とど》めし仔馬を生みたるを以て、現在|斯界《しかい》の専門家、及び、遺伝学者間の論議の中心となりおり、しかも這般《しゃはん》の奇現象を説明し得べき学説の中《うち》、最も権威あるものとして、他の諸説を圧倒しつつあるは目下のところ唯一つ、
――生物の親子の外貌性格の相似は、その親の心理に潜在せる深刻なる記憶力が、その精虫と卵子とに影響したるものに外《ほか》ならず――直接の父母以外の、他人に酷似せる子
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