か。察するところ汝は、何人《なんぴと》か黒髪を有する男子と密通してこの子を宿せしものに相違なし。余は斯《かく》の如き児を吾が家の後嗣として披露する能《あた》わず、疾《と》く疾くこの児を抱きて親里に立ち去れ。而《しか》して余の責罰の如何に寛大なるかを思い知れ」
とぞ罵《ののし》りける。然るにこれに対してアリナ夫人は不思議にも一言の弁解をも試みんとせず。その夜《よ》深く件《くだん》の黒髪の孩児《がいじ》を抱きて秘かに産室をよろぼい出《い》で、跣足《はだし》のまま数|哩《マイル》を歩行して、翌日の正午親里に帰り着きしが、家人の隙《すき》を窺いて玄関横の応接間に入り、その正面に掲げある黒髪の美青年の肖像画の前に来り、石甃《いしだたみ》の上にたおれ伏したるまま息|絶《た》えぬ。程経《ほどへ》てこれを発見せし実父母は驚駭《きょうがい》措《お》くところを識《し》らず。直ちに隣家のタリスマン氏を迎え来り、水よ薬よと立ち騒ぎけれどもその甲斐《かい》なく、唯、黒髪の孩児のみが乳を呼びつつ生き残りけるこそ哀れの中のあわれなりしか。
その後、この事件は訴訟問題となり、アリナ夫人の実父とコンラド従男爵とは法
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