ったので御座いましょう。時々思い出したように上野の図書館に参りましては、医学に関係しました不思議な出来事や、珍らしい事実を書いた書物を、あてどもなく読み散らしておりますうちに又も、思いもかけませぬ書物から大変なお話を見つけ出しまして、ビックリ致したので御座います。
 その書物を書かれましたのは、その頃もう亡くなっておられた医学博士の石神刀文《いしがみとうぶん》という方で、たしか明治二十年頃に西洋の書物から飜訳なすったものと、おぼえております。題名は「法医学夜話」と申しますので、その中には昔から今日までの間に、法医学上の問題になりました色々な不思議な出来事が昔風の文章で面白く書いてあるので御座いましたが、そのおしまいの方に次のようなお話が交っておりました。その書物はもうどこの本屋にもないとの事でしたから、私はその後《のち》、今一度図書館に通いまして、そのお話のところだけを書き写して、お兄様のお写真やお話の記事と一緒に肌身離さず持っておりましたので、お読み悪《にく》いか存じませぬが、そのままここに挟んでおきます。

     法医学夜話(石神刀文氏著)[#「(石神刀文氏著)」は太字]

 
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