何とも説明が出来ない。嬉しいのか、恐ろしいのか……おそらくその両方が一緒になった気持ちであったろう。私が今まで当の敵として睨んで来た美少女……憎んでも飽き足らぬ奴と思って生命《いのち》がけで追い詰めて来た疑問の女……三人の生命《いのち》を手を下さずして奪ったとも見られる恐るべき怪美人……それが最早《もう》死んだものと思って安心して這入って来た私は、その女がまだ死んでいないのを見て、安心以上の安心ともいうべき一種の喜びを感ずると同時に……扨《さ》ては……扨《さ》ては……と胸の躍るような緊張に全身を引き締められるのを感じたのであった。
 その時に女はうっすりと眼を見開いて私の足下を見たようであったが、その眼をそろそろと上げて私の顔を一眼見ると、忽ちその眼を大きく見開いた。
「……あっ……」
 と叫んで椅子から跳ね起きて、颯《さっ》と頬を染めながら私を突き除《の》けて逃げ出そうとした。その右手を私は無手《むず》と捕えた。
 女は袖で顔を蔽うたまま、二三度振り切って逃げよう逃げようと藻掻いたが無駄であった。私の右手の指は、鋼鉄の輪のように女の右手を締め付けているために、化粧をした手首から爪の先
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