みはだけて床の上に落した。そろそろと手を伸ばして卓子《テーブル》の上の灰色の封筒を取って、素早く握り込んで直ぐに女を見た。眼にも止まらぬ早さで名刺を取った。床に落ちたピストルを拾って又、女を見た。帽子と外套を探すらしく頭を押えながら、猫のように素早く室《へや》の中を見まわした。そうして室《へや》の中に、そんなものがない事がわかると、老人のように腰を屈めたまま、又も、キット女の横頬を見詰めながらじりじりと後退《あとじさ》りをした。うしろ向きに右手の扉《ドア》のノッブに手をかけてそろそろと開いた。そのままくるりと向き直ると、疾風のように外へ飛び出そうとした。
……が……彼はそのままぴったりと石のように凝固してしまった。眼の球を破裂する程剥き出し、口を裂ける程引き開き、両の拳を赤ん坊のように握り締め、膝頭をX形に密着《くっつ》け合わせたまま、床から生えた木乃伊《ミイラ》の姿に変ってしまった。そうして一心に、眼の前の入口の暗《やみ》の中から浮き出している真白い顔と、真黒い着物を凝視した。
それは白襟《しろえり》に黒紋附《くろもんつき》の礼服姿の女が、乱れかかった縮れ毛の束髪をがっくりとうな
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