《おもし》に置いた。その前に両手の指を支えて、室《へや》の隅に倚りかかって坐っているゴンクール氏を見下しつつ、謹厳な日本語で言葉をかけた。
「……ゴンクール様。わたくしから貴方に申上げねばならぬ事はこれだけでございます。……おわかりになりますか。わたくしの申上げております事が……。亡くなられましたお父様……志村浩太郎様と、嬢次様|母子《おやこ》の貴方に対する復讐はこれでおしまいなのでございますよ。妾《わたし》の役目はもうこれですっかりおしまいなのでございますよ。
……わたくしは皆様に代りまして貴方にお礼を申上げます。よく今まで御辛棒なすって、わたくし達の復讐をお受けになって下さいました。もう決してこの上に御迷惑はかけませんから何卒《なにとぞ》御安心下さいまし。わたくし達はもう死ぬよりほかに仕事が残っていないのでございますから……。その約束の時間は今から……七分……きっちり九時でございます。お喜び遊ばせ。貴方は今から七分経ちますれば、元のバード・ストーン氏にお帰りになる事が出来るのでございます。そうしてもし御運が強ければ無事に本国へお帰りになる事が、お出来になるかも知れないのでございま
前へ
次へ
全471ページ中433ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング