はその翌日辞表を提出したるものなるが、その後本紙上に於て屡々《しばしば》報ぜし通り、××協商が行悩みとなり、吾国の国防と外交が極度の孤立|屏息《へいそく》状態に陥りおりたる折柄、突如としてかかる対×国外交の硬化を象徴する事件の勃発を見たるは右××協商の経過が、外電報ずるところの愛蘭《アイルランド》の独立に関する英米関係の悪化に影響せられて好転し、国防基礎を確立したるものと見るべき理由ありと観測せられつつあり。


     狭山氏は今朝より不在[#大文字]
         留守宅には盛装の二婦人[#中文字]

 因《ちな》みに前記の如く、今回の事件に大関係ありと目さるる狭山九郎太氏は今朝来いずれへか外出しおり柏木の自宅には親戚と称する盛装の二婦人が留守居して長閑《のどか》に紅茶を啜りおるのみ。事件の勃発を全然関知しおらざるものの如し。【狭山註――以上号外原文のまま挿入】

 この号外を訳読した女の英語は、恰《あたか》も英国の社交界の婦人のそれの如く流麗で、明晰であった。そうして読み終ると旧《もと》の通りに丁寧に折り畳んで、丸|卓子《テーブル》の真中に置いて、その上から角砂糖入れを重石
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