を見届けてから、わたくしと一緒に自殺なさる手筈になっているのでございます。国賊の妻……売国奴の子としての一生を終って、立派な日本民族としての、死後の魂を復活しようと思って、待ちかねておいでになるのでございます……そうして妾も及ばずながら、淫奔者《いたずらもの》の名を洗い淨めまして、日本人らしい清らかな、魂ばかりの愛の世界に蘇りたいと、あこがれ願っているのでございます。
 ……わたくし共のこの願いを、お許しにならない方は一人もおいでになりますまい。
 ……狭山さまも、わたくしどものこうした心をお察しになったものか、まだお帰りにならぬようでございます。九時までにはまだゆっくり時間がございますね。
 ……まだお眼にかかりませぬが、お父様の志村浩太郎様も、あの世から、わたくしの声をお聞きになっているのでございましょう……」
 女がこう云い切った時、室《へや》の中は全く墓場の光景と化し去っていた。ゴンクール氏の眼は空しく女の影を反映し、耳は徒《いたずら》に女の声を反響するばかり……顔面に何等の反応もあらわさない。それと相対《あいむか》って死人の怨恨を述べる女の影。音もなく廻転する時計。ひらひらと
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