ゴンクール氏の顔は見る見る緊張した。その皮膚は素焼の陶器のように、全く光沢《ひかり》を失って、物凄い、冷たい眼の光りばかりがハタハタと女を射た……。
 何秒か……何世紀か……殆んど人間の力には堪えられぬ程の恐ろしい沈黙が、空しく室《へや》の中を流れて行った。
 それは崇高な静寂……息苦しい空虚であった。……間一髪を容れぬ生死の境がじりじりと、涯てしもなく継続して行く……手に汗を握る……死んだ画面であった。
 その中に唯独り正面の時計の振り子は、硝子《ガラス》の鉢に水銀の波を湛えて、黄金の神殿の床を緩やかに廻《めぐ》って行き、又、ゆるやかに廻りかえって来た。そうして、やがて場面とおよそ調和しない閑静な響を唯一つ打った。
 ……八時十五分……。
 女は突然に身を反《そ》らして高らかに笑い出した。
「ホホホホホホ。ヒヒヒハハハホホホホホホホホホホホ……」
 その甲走《かんばし》ったヒステリカルな声は、絶え間なく、次から次へ響き渡って、室《へや》の中に充ち満ちし電燈の光りを波のように打ち震わしているかのように思われた。……但し……その声は明かに作り笑いとしか聞えなかった。けれども、それが作
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