敵であるかのように、油断なく身を構えながら……時計……油絵……骸骨、電燈……と順々に見まわして行ったが、それにしてもまだ、腑に落ちない事が余りに多いので、半信半疑の心理状態に陥ったものであろう。次第に血色を回復しながらも不安そうに女を見下した。威嚇するように重々しく口を啓《ひら》いた。
「……それでは……この家はミスタ・サヤマの家《うち》ではないのですか」
「……いいえ。叔父の家《うち》に間違いございませぬ」
「……ふむ。それでは……」
とストーン氏はもう一度ぐるりと室《へや》の中を見まわした。
「ジョージ・クレイはどこに居るのですか」
「今しがたお答え致しました」
「え……何と云いました」
「お忘れになりましたか。嬢次はお母様と一緒に天国に……」
「アッハッハッハッハッハッハッハッハッ……」
とストーン氏は女の言葉を半分聞かぬうちに、突然、取って付けたように高らかに笑い出した。しかもそれは今の女の言葉に依って、何事か或る重大な疑問が解けたために、今までの不安と、緊張から一時に解放された事を証拠立てるところの、どん底までも朗かな、痛快な、ヤンキー式の感覚を投げ出した笑いであった。椅
前へ
次へ
全471ページ中387ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング