落ち着いた振袖姿は、ストーン氏とまるで正反対の対照を作っていた。ストーン氏は、そうした女の態度を見かえると、吐き出すような口調で問うた。
「ジョージはどうしましたか……それから……」
「はい。二人で曲馬場を出ますと嬢次様は、表に立って絵看板を見ていた夕刊売りから夕刊を二三枚買って、一面の政治欄を見ておられましたが……」
「政治欄……政治の事が書いてあるのですね」
「そうでございます」
「どんな記事を読んでおりましたか」
「……さあ……それは妾《わたし》には、よくわかりませんでしたけど……どの夕刊の一面にも……日仏協商行き悩み……と大きな活字で出ておりまして、英吉利《イギリス》と亜米利加《アメリカ》が邪魔をするために日本と仏蘭西《フランス》の秘密条約が出来なくなったらしいと書いてありました」
「……ジョージはそこを読んでおりましたね」
「……それからその中の一枚に……極東|露西亜《ロシア》帝国……セミヨノフとホルワットが露西亜の皇族を戴いて……という記事と……張作霖《ちょうさくりん》が排日を計画……という記事がありましたのを嬢次様は一生懸命に読んでおられました」
「曲馬団の前で?」
「い
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