して今から二十分ばかりすると馬が暴れ出すから、それまで楽屋の入口に近い土間に行って見ていようと仰有《おっしゃ》って、もう一度二人分のお金を払って曲馬場に這入られました。その時が三時十分きっかりでございました」
「貴女はそれが人を殺すためであった事を知っておりましたか」
「いいえ。嬢次様は御自分を殺しても、決して人を殺さないと云われました」
「その証拠がありません」
「ございます。立派にございます。その証拠には、大馬と小犬のお芝居が済みます少し前になりますと、嬢次様は心配そうな顔をなすって、妾《わたし》にちょっと待っているように仰有って出て行かれましたが間もなく帰って来られまして……これで安心だ。この次の馬の舞踏に使う女の衣裳や靴を、楽屋のうしろから這入って、ちょっと人に解らぬ処に隠しておいたから、それを探しているうちには時が経ってしまうだろう……しかし何故こんなに早く演技を済ましたのだろう。自分が居ない事は最早《もはや》わかっている筈だから、その埋め合わせに二十分で済む芸当は三十分にも五十分にも延ばす筈だのに、この塩梅《あんばい》では大馬と小犬の芝居は二十分かからないかも知れない……と
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