ざいました。ちょうど叔父の狭山から留守を頼んで来た手紙と一緒に参りましたから、私は狭山の頼みの方をやめまして、三越に参りまして、四五日前に頼んでおきましたこの着物と着換えまして、曲馬場に参りました。ちょうどコサック馬の演技の最中でございました」
「それでは今日ジョージが、私たちの大切な馬に、毒を飲ませたこと……暴れ出させたこと……貴女《あなた》は知りませんね」
「存じております。妾《わたし》は最初からそれを見ておりました」
「えッ。見ておりました?」
「嬢次様は私と一緒に見物に来ておられたのでございます」
 ストーン氏は自分の耳を疑うように眼を丸くした。
「……どこに……どんな着物……」
「……大学の制服を召して、小さな鬚《ひげ》を生やして、角帽を冠って、私が居りました席の直ぐ前隣りに坐って、そこに居た老人の紳士と馬の話をしておられました。そうして米国の国歌が済むと立ち上って表に出られましたから、私もあとから立って追い付きますと、嬢次様はグルリと曲馬場を廻って、厩《うまや》の処へ行って、亜鉛《トタン》の壁を飛び越して中に這入って、馬の顔を撫でながら錠剤にした薬をお遣りになりました。そう
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