、顔面の表情は写真よりもずっと厳《いか》めしい。殊にその四角い額の中央に横わった一本の太い皺《しわ》と、高く怒《いか》った鼻と、大きく締った唇と、頑丈にしゃくった顎とは意志の強い、大胆な、どんな事でも後には引かぬという性格をあらわしているようで、その切れ目の長い眼の底には、獅子《しし》でも睨み殺す光りが籠もっているように見える。
女は十年も前からこの家に居る……という風に落ち着いて、澄まし込んでいるが、ストーン氏の方は困ったという顔付で、両腕を組んで、眼を半眼に開いてへの字口をしている。のみならず氏はたった今この家に来たものらしく、百燭の電燈に真向きに照されたその顔は、急いだためか、真赤になっていて、広い四角い額には湯気の立つ程、汗が浸《し》み出している。
白い窓掛けの理由がやっと判明《わか》った。女は百燭の電光と、白麻の窓掛けの強烈な反射で、相手の眼を眩《くら》まそうとしているのだ。
私はこの驚くべき事実に対して眼を瞠《みは》らない訳に行かなかった。
二人は赤の他人なのだ。他人も他人、全くの初対面で、しかも女は何かしらバード・ストーン氏に対して敵意を持っているのをバード・スト
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