まった。
 その窓には非常に綿密なドローン・ウォークを施した、高価なものらしい白麻の窓掛《カーテン》が懸かって、一面に眩《まぶ》しいハレーションを放射している。私の家は殺風景な青ペンキ塗りの板壁で、あんな贅沢な窓掛とは調和しない。この上に今は二月の末で、白い窓掛は明かに時候外れである。その向う側で、電話にかかっているらしい話声が聞えるが、程遠い上に、硝子《ガラス》窓に遮られているのでよく聞えない。
 私は暫く門の処に石像のように突立っていた。百燭の青電球に照し出された白い窓掛と、その光りを反射して雪のように輝いている庭の茂みを見まわしていた。庭の隅々や、家の向う側に隠れている人の気配が感じられはしまいかと、眼を凝らし、耳を澄ましていた。しかし、そこいら中はひっそりかんとしていて、そんな気配はちっとも感じられなかった。
 私は自分の家ながら、敵の住家を見るような気持ちがした。何かしら想像以上のものが……もしくは私の神経以上の敏感なものが待ち構えているようで、容易に門の中へ這入れなかった。況《ま》して窓の中を覗くのはこの上もない冒険で、白い光りの幕を背景にした私の影法師を、道沿いの電車の音
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