の時に私はふと思い出して、腰のポケットを撫でてみたが、そこにはT型七連発のブローニングがちゃんと納まっていた。小型ではあるが新火薬の尖弾で、二百|米突《メートル》以上利く凄いものである。
 自動車は一度もストップを喰わずに新宿駅に着いた。
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     下巻
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 まだ月が出ない。
 暗い掘割りの底の遠く遠くに小さなイルミネーションのような中野駅が見える。
 今乗って来た山の手電車は、蒼白いスパークをレイルに反射させながら、その方向へ一直線に、小さく小さく吸い寄せられて行った。
 暗い掘割りの一町ばかり向うに、黒い木橋《もっきょう》が架かっている。その左手には高い火の見|梯子《ばしご》が見える。それと向い合って、木橋の右手の坂下には、私の家の門口にある高さ三丈ばかりのユーカリの樹が梢《こずえ》を傾けているが、その上空には無数の星が明日《あす》の霜を予告するように羅列している。冬のおわりの最も澄み切った、厳粛な夜である。
 私は急に気分が引き締って来るのを感じた。一事、一物も見逃してはならないぞ……後で笑われるような軽卒な事をするまいぞ……死生を超越した八面|玲瓏《れ
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