去る大正七年十月十四日の朝、東京駅ホテル第十四号室で起った岩形圭吾氏こと、志村浩太郎氏の変死事件を探るために、私はその朝の午前十一時頃カフェー・ユートピアへ来た。そこで一冊の聖書を見付けて、その聖書によって志村氏と、その妻のぶ子がJ・I・Cに関係している事実を発見したことを……。
……ところでその時に私が坐っていた卓子《テーブル》は、確かに最前坐っていたのと同じ卓子《テーブル》の同じ椅子で、しかも、その卓子《テーブル》が又その前夜、志村夫婦が差し向いに坐っていたその卓子《テーブル》ではなかったか。……のみならずその卓子《テーブル》に腰をかけていた志村浩太郎氏が、その妻ののぶ子から紫のハンカチを受け取る直前に、その卓子《テーブル》の上に並べていた四皿の料理は、今夜疑問の女から紫のハンカチを受け取る前に並べていた四皿の料理と、そっくりそのままの……黒麺麭と、スープと、ハムエッグスとウイスキー入りの珈琲ではなかったか。
……今の世に奇蹟はない。
……偶然としては余りに偶然過ぎる。
しかもこの奇蹟的な偶然を、私の第六感の作用として判断すると、一切の疑問の闇を貫く一道の光明が、サーチ
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