時教会の入口の扉《ドア》をノックする音が聞えた。そうしてどこかで聞いたような錆《さ》びのある声が洩れ込んで来た。
「這入ってもよろしゅうございますか」
「よし這入れ」
と云うと声に応じて扉《ドア》が開いた。それは最前の運転手で、内部の物々しい、静かな光景を見てちょっと臆したようであったが、直ぐにつかつかと近寄って来て、ひょっくりとお辞儀をしながら一通の手紙を差出した。
「こんなものが門の中にありました」
「門の中のどこに!」
と私は受取りながら訊ねた。
「……扉《ドア》の内側に挟んでありましたのが、風で閉まる拍子に私の足下へ落ちましたので、多分旦那方の中《うち》においでになるんだろうと思いましたから……」
「よしよし。わかった。貴様は表へ出て待ってろ」
「いや。一寸待て」
と志免警部が横から呼び止めた。運転手はぎくりとしたようにふり返った。
「へ……へい……」
「最前貴様がここへ来た時には、日本人や外国人取り交《ま》ぜて五六名の者がたしかに居たんだな」
「へい。それはもう間違いございません。私がこの眼で見たので……」
「よし……行け……」
と志免警部は噛んで吐き出すように云った
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