ん。一方口ですから」
「麹町署に頼まなかったのか……見張りを……」
「頼んだのです。ところがあの教会なら怪しい事はない。志村のぶ子という別嬪《べっぴん》の旧教信者が居て熱心に布教しているだけだと、下らないところで頑張るのです」
「僕の名前で命令したのか」
「貴方のお名前でも駄目です。古参の警視で威張っているんです」
私は泣きたいくらいカッとなってしまった。
「……馬鹿野郎……後で泣かしてくれる。……調べもしないで反抗しやがって……地下室か何かあるんだろうこの下に……」
「はい……電話線があるのに電話機がないので直ぐに秘密室があるなと感附きました。それでそこいら中をたたきまわりましたらあの絵の背後が壁でない事がわかりましたので、引っぱって見ますと直ぐ階段になって地下室へ降りて行けます。地下室には女がつい最前まで居て、何か片附けていたらしく、紙や何かを台所の真下にあるストーブで焼いてありまして何一つ残っておりません。只レミントンのタイプライターと電話器とこのガソリンランプが一台残っているばかりです」
私は地下室へ這入って見る気も出なかった。皆と一緒にぼんやりと立っていた。
するとこの
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