ったのである。
 二三秒の間三人は、薄暗い教会堂のまん中で、色硝子の光線を浴びながら、青い顔を見合わせたまま立っていた。
 するとこの時、どこからともなくガソリンの臭いがして来た。熱海氏も気が付いたと見えてキョロキョロとそこいらを見まわしていたが、やがて「アッ」と叫んで私の背後を見た。私も振り返って見たが「アッ」と驚いた。正面向って右側の壁にかかった基督殉難の図が扉《ドア》のようにギイと開いて、最新式の小型な白金カバー式ランプを提げた志免警部が飛び降りて来た。そのあとから三人の刑事が次々に飛び降りてしまうと、後は又ギイと閉まって旧《もと》の通りになった。……私は開いた口が閉《ふさ》がらなかった。こんな教会にこんな仕掛がしてあろうとは夢にも思わなかった。やはりこの家は独探《どくたん》の家だったのだな……と思った。
 けれども志免警部と三人の刑事は私よりももっと失望したらしく、先程の元気はどこへやら、屠所《としょ》の羊ともいうべき姿で、私の前に来て思い思いにうなだれた。
「一体どうしたのだ」
 と私は急に昂奮しながら問うた。
「はい迅《と》うに逃げていたのです。居たのなら逃げようがありませ
前へ 次へ
全471ページ中157ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング