ま》ふべし。
――心《こゝろ》より兄弟《きやうだい》を赦《ゆる》さずは我《わ》が天《てん》の父《ちゝ》も亦《また》汝等《なんぢら》にこの如《ごと》くし給《たま》ふべし。
――よばるゝものは多《おほ》しと雖《いへども》、選《えら》ばるゝ者《もの》は少《すく》なし。
――娼妓《あそびめ》は爾等《なんぢら》より先《さき》に神《かみ》の国《くに》に入《い》るべし。
――爾等《なんぢら》聖書《せいしよ》をも神《かみ》の力《ちから》をも知《し》らざるによつて謬《あやま》れり。
――高《たか》うするものは卑《いやし》くせられ自己《じこ》を卑《いやし》くするものは高《たか》くせられん。
――野《の》にありといふ者《もの》あるも出《い》づる勿《なか》れ。
ここまで読んで来ると又気が付いた。……なあーんだ……と口走りながら苦笑した。私は何か余程六ケ敷い暗号ではないかと思って、一生懸命に注意しながら一句一句を読んでいたのであったが、よく見ると何でもない。西洋の若い男女がよく媾曳《あいびき》の約束なんかに使う極めて幼稚な種類の暗号で、何も聖書に限った事はない。小説にでも教科書にでも何にでも使える
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