ぬ流麗な英語であった。さながらに名歌手の唇と情緒を思わせるような……。
「お撃ちなさい……撃って下さい……ゴンクール様。妾《わたし》はもうこの世に望みのない身体《からだ》でございます。妾の一生涯はもう過ぎ去ってしまっているのでございます。……ですからもう何もかも本当の事を申上げてしまいます。そうして貴方の御勝手になすって頂きます。
 ……最前からわたくしが申しました事は、みんな真実でございます。……けれども……その中《うち》にたった一つ嘘がございました。それは妾が狭山の姪という事でございます。妾は狭山様と縁もゆかりもない者でございます。
 ……妾が狭山様のお宅に伺いましたのは今日が初めてでございました。それまではただお顔とお名前を新聞で存じておりましただけでございました。
 ……わたくしたち三人……志村のぶ子様と、呉井嬢次様と、わたくしとの三人は、狭山様のお手を借りないで、あなた方に復讐をするために、わざと狭山様のお家を拝借したのでございます。そうして貴方以外の方々への復讐は完全にもう遂げられているのでございます。その事を貴方がお気付きにならないように貴方をここへ引き止める役目を妾が受持ちまして、ここにお待ちしていたのでございます。
 ……お二人は、ですから最早《もう》安心して天国へお出でになった事と思います。貴方がここへお出でになる事を警視庁に知らせて、警視庁のお手配りがすっかりこの家のまわりを取り巻くまで、妾が生命《いのち》がけで貴方をお引き止めしている事を、お二人とも固く信じて、妾があとから参りますのをあの世で待っていて下さる事と思います。
 ……志村様|母子《おやこ》に、そんな怨みを受ける覚えがないとは申させませんよ。わたくしは何もかも存じておりますよ。嬢次様は日本にお着きになりますと間もなく、お父様の志村浩太郎様が或る弁護士に預けておかれた遺言書を受取っておいでになるのですよ。貴方が志村様一家に、どのような非道《ひど》い迫害をお加えになったかを詳しく書いてあります。長い長い狭山様宛てのお手紙を……。自分の死後の敵ウルスター・ゴンクールを是非とも斃《たお》して下さい……という文面を……。
 ……ゴンクール様……貴方は何故わたくしをお撃ちにならないのですか。わたくしは貴方の秘密をすっかり存じているのでございますよ。只今帝国ホテルにおかけになった貴方のお電話の意
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