な恐ろしい「胎児の夢」を見て藻掻《もが》き苦しんでいるのだ……。
……そうしてこれから生れ出ると同時に大勢の人を片《かた》ッ端《ぱし》から呪い殺そうとしているのだ……。
……しかしまだ誰も、そんな事は知らないのだ……ただ俺のモノスゴイ胎動を、母親が感じているだけなのだ。
[#ここで字下げ終わり]
私の寝ている横のコンクリートの壁を向側からたたく音がし初めた。
「……兄さん兄さん。一郎兄さん。あなたはまだ妾《あたし》を思い出さないのですか。あたしですあたしです……モヨ子ですよ……モヨ子ですよ。返事して下さい……返事して……」
と二三度連続して叩いたと思うと、痛々しい泣声にかわって、何かの上にひれ伏した気はいである。
私は寝台の上に長々と仰臥したまま、死人のように息を詰めていた。眼ばかりを大きく見開いて…………………………………。
……ブ…………ンンンンン……
という時計の音が、廊下の行き当りから聞えて来た。
隣室《となり》の泣声がピッタリと止んだ。それにつれて又一つ……
……ブ――――ン……
という音が聞えて来た。前よりもこころもち長いような……私は一層大きく眼を見開いた
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