を取り直しつつそこに佇立していた二名の女に迫り、まず舞踏狂の少女某を畑の隅に追い詰めて眉間を打ち砕き、続いて最前から女王の姿に扮装しつつ平然として場内を逍遥し続けていた年増《としま》女に近づいて行ったが、同女が※[#「厂+萬」、第3水準1−14−84]声《れいせい》一番、「無礼者。妾《わらわ》を知らぬか」と一睨《いちげい》すると、呉一郎は愕然たる面《おも》もちで鍬を控えて立止ったが、「アッ。貴女《あなた》は楊貴妃様」と叫びつつ砂の上に跪座《きざ》した。その時に辛《かろ》うじて意識を回復した甘粕氏は苦痛を忍びつつ起き上り、場《じょう》の入口を開いて逃げ迷うていた狂人たちを外へ出すと、又も安心のためか気が遠くなって打ち倒れた。そのあとから呉一郎も鍬を片手に、片脇には最初の犠牲、浅田シノの死骸を軽々と引き抱えつつ、女王姿の狂女に一礼して流血|淋漓《りんり》たる場内を出で、悠々と自分の病室、七号室に帰って行ったが、皆手を束《つか》ねて戦慄しつつ遠くから傍観するばかりであったという。


   狂少年の自殺[#「狂少年の自殺」は本文より5段階大きな文字]
     平然たる正木博士[#「平然たる
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