や、折目の歪《ゆが》んだ処は一個所もないのみならず、巻物を繰り拡げて見ると、防虫剤らしい、強い香気を放つ白い粉が、サラサラと光って机の上に散り落ちた。次に開いた調査書類も同様で防虫剤こそ施《ほどこ》してないが、パラパラと頁《ページ》を繰って行くうちに、埃臭い香《かおり》がウッスリと鼻に迫って来る。いずれにしても最近に人の手が触れなかった事は確かである。
 私はそれから尚《なお》念のために、フールスカップを綴じ合せた正木博士の遺言書を開いて見た。そうして最後の二三頁を繰り返して見たが、今朝《けさ》まではインキが乾いて間もない、青々としたペンの痕跡《あと》に見えたのが、今はスッカリ真黒くなって、行と行との間には黄色い黴《かび》さえ付いているようである。どう見ても二日や三日前に書いたものとは思えないのであった。
 私は不思議から不思議へ釣り込まれつつ、最前正木博士がした通りにその調査書類を風呂敷の外へ抱え出してみた。すると意外にもその下に、一枚の古ぼけた新聞の号外が下敷になっているのを発見した。これは最前、正木博士がこの風呂敷をハタイタ時には、確かに存在していなかったものであった。
 私はキ
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