みれになったりして、ボタンが二つ程ちぎれて、カラーが右の肩にブラ下っている姿は恰度《ちょうど》、酔漢《よいどれ》と乞食との混血児《あいのこ》を見るようである。左の手の甲に真黒く血が固まり附いているのはどこを怪我したのであろう。別段に痛い処も痒《かゆ》い処もないが……併し眼と口の中が砂ホコリで一パイになっているらしく、瞼《まぶた》がヒリヒリして歯の間がガリガリするその不愉快さ……。
私はその眼と口を今一度、机の上に突伏せながら、ジット後先《あとさき》を考えて見たが、一体何しにここへ帰って来たのか、どうしても思い出せなかった。机の端に置き忘れて行った新しい角帽を凝視《みつめ》ながらその時の気持を思い出そう思い出そうと努力したが、この時に限って不思議な程、私の聯想力が弱っていた……何かしら非常に重大な品物か何かをこの室に忘れて、それを取りに帰って来たようにも思うのだが……と思い思いソロソロと頭を上げて前後左右を見まわして見ると、私の頭の上には大きな白熱電球が煌々《こうこう》と輝いている。
入口の扉《ドア》は半分|開《あ》いたままになっている。
しかし、大|卓子《テーブル》の上の書類は誰
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