じたが、終《しま》いにはその夢うつつさえ感じられなくなるまで恍惚として蹌踉《よろめ》いて行った……ように思う。
それから何時間経ったか、何日経ったか判らない……。
フト身体《からだ》中がゾクゾクと寒気立《さむけだっ》て来たようなので気がついて見ると、私はいつの間にか最前《さっき》の九州帝国大学精神病科の教授室に帰っていて、最前腰をかけていた回転椅子に、最前のように腰をかけて、大|卓子《テーブル》の緑色の羅紗《らしゃ》の上に両手を投げ出したまま突伏《つっぷ》しているのであった。
私はチョットの間、夢を見ているのではないかと疑った。先刻《さっき》……正午《ひる》頃にこの室を飛び出してから、方々を歩きまわって、見たり聞いたりした色々の出来事や、考えまわしたいろんな不思議な事……又はその間に感じたタマラナイ恐ろしさや息苦しさは、みんなここにこうして気絶している間に見た夢ではなかったかと疑ってみた。そうして気味わる気味わると自分の身のまわりを見まわして見たのであった。
私の服もシャツも、穿《は》いている靴も、汗と塵埃《ほこり》にまみれて真白になっている。両方の肱や膝は大きく破れたり泥ま
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