コレダケ[#「コレダケ」に傍点]が最後の、唯一の疑問として残って行く……。
……私は誰だろう……誰だろう……私の過去とこの事件の間にはドンナ因果関係が結ばれているのだろう……。
[#ここで字下げ終わり]
 ……とこう考えては今日の記憶を繰返し、くり返しては又考え直しつつ、暗雲《やみくも》に足を早めたり、緩《ゆる》めたりして歩いて行った。……遠く近くで打出す半鐘《はんしょう》の音……自動車ポンプの唸《うな》り……子供の泣き声、機《はた》を織る響《ひびき》……どこかの工場で吹出す汽笛の音……と次から次へ無意識の裡《うち》に耳にしながら、右に曲り、左に折れしていたが、そのうちに私は又、突然に土を蹴って立ち止った。気絶する程ドキンとして首を縮めながら立ち竦《すく》んだ。
 ……大変だ。あの絵巻物を、あのままにして来た。
 ……あの絵巻物のお終《しま》いの処にある千世子の筆蹟は誰にも見せてはならぬ……。
 ……正木博士が見たら発狂するか……本当に自殺するかも知れぬ……。
 ……タタ大変だッ……。
 私は思わず飛び上った。そうしてその次の瞬間にはクルリとうしろを向いて、どこか判らぬ真暗《まっくら》
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