な……。
……けれども……。
……けれども……。
[#ここで字下げ終わり]
ここまで考えて来ると、私はパッタリと立ち止った。……賑やかな往来を見た。……不思議そうな目付きや顔付きで私を振り返って行く人々を見まわした。高い高い広告塔の絶頂でグルグルグルグルまわり出した光の渦巻を見上げた。その上に横たわる鮮肉のような夕映《ゆうばえ》の雲を凝視した。
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……けれども……。
……けれども……。
……よく考えてみると、私はまだその中から、私の過去の記憶の一片だも、思い出していないのであった――私は何者――という解答を自分自身に与える事が出来ない。憐れな健忘症の状態に止《とど》まっているのであった。私は今朝《けさ》あの七号室で眼を開いた時と少しも変らない……依然としてタッタ一人で宇宙間を浮游《ふゆう》する、悲しい、淋しい、無名の一|微塵《みじん》に過ぎないのであった。
……私は何者?……。
……ああ……これを思い出したら私はすぐにも呉青秀の呪いから醒めそうに思われるのに……あの絵巻物の魔力から切離されてしまいそうに思われるのに……どうしてもそれが思い出せない。いくら考えても
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