奥の奥の核心まで看破すると同時に、その同窓同郷の友人として、又は学者としての有らん限りの同情と敬意とを正木博士に払うべく決心をしたのであった。そうしてその事件の内容の、要点だけを解らなくした。正しい調査記録を当の本人の正木博士に引き渡して、焼くも棄てるも、その自由に委《まか》した。……又は態々《わざわざ》茶菓子を持たして寄越して、「私は遠くに離れ退《の》いておりますから、どうか御心配なく御自由にお話し下さい」という心持ちを、云わず語らずの中《うち》に知らせたりした。
……「正木博士は一箇月前に自殺した」なぞいうような口から出任せな嘘を吐《つ》いたのも、やっぱりそんな意味の親切気から、立ち聞きをしている正木博士が、あの場面に出て来ないように……そうしてアンナ苦しい破目《はめ》に陥らないように……もしくは回復しかけている私の頭を、又も取り返しのつかぬ混乱に陥らせないように警戒するつもりで云った事であろう……あとで嘘だと判ってもいいつもりで……。
……実に男らしい尊い、申分《もうしぶん》のない紳士的態度を、若林博士は執《と》って来たのであった。
……然《しか》るにこれに反して正木博士は、この
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