あった……虚偽の学術研究でも、捏造《ねつぞう》の告白でもなかった。しかも、それは初めから終りまで正木博士がタッタ一人で計画して、実行して来た事ばかりであった。
……若林博士は何でもなかったのだ……。
……若林博士は初めから何も知らずに、正木博士の研究の手先に使われていたのだ。
……正木博士が行った巧妙奇怪を極めた犯罪に魅惑されて、自分から進んで調査をしているうちにいつの間にか正木博士の研究発表の材料を集める役廻りを引受けさせられていたのだ。正木博士が仕掛けておいた蹄係《わな》に美事に引っかかって、スッカリ馬鹿廻《ばかまわ》しにされていたのだ……。
……けれども若林博士はその結論として、あの絵巻物の最終に残されている千世子の筆蹟を発見した。あらゆる疑問を重ね合わせた最後の疑問の焦点となるべき、唯《ただ》一点を発見して私と同じようにビックリしたに違いない。そうして私と同じように一瞬間の裡《うち》に一切を解決したに違いない。すべてが正木博士の所業《しわざ》である事を発見したに違いないのだ。
……しかしそこで若林博士が執《と》った態度の如何に立派であった事よ……若林博士は、かくして事件の真相を
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