、絵巻物を捲き返そうとしたが、又……ビクリ……とすると手を止めた。思わず空間を凝視しながら……。
 ……実に意外千万な暗示が頭の中に閃《ひら》めき込んで来たからであった……。
 ……姪の浜の石切場で、呉家の常雇《じょうやと》いの老農夫戸倉仙五郎が呉一郎を発見した時には、絵巻物の白い処ばかりを呉一郎が凝視していたという……その不可思議な事実のホントの意味が、チラリと判りかけて来たからであった……。

 ……というのは外でもない……。
 この絵巻物の中でも、おしまいの漢文の由来記が書いてある処までは、度々人間の手によって拡げられたり、捲かれたりしたものに違いない事がわかり切っている。従って、その一丈近い長さの間には、何かしらこの絵巻物を覗いた人間の身に附いたものが落ち込んでいるべき可能性のある処である……が併《しか》し、それと同時に、万人の中に一人でも、これから先の白い紙ばかりの処を、ズット先の方まで開いて見る人間があったとすれば、その人間の頭は、余程普通と違った頭でなければならぬ訳で、どちらかといえば、そんな人間は絶無に近い事が、常識で考えても直ぐに判るであろう。……とはいえ又、万一にも
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