まれたようになって二三度上ったり下ったりしたまま、咽喉《のど》の奥の方へ落ち込んで行った。……と思ううちに見る見る椅子の中に跼《かが》まり込んで死人のようにグッタリと首を垂れてしまった。
コツコツコツ……コトコトコトコト……コツンコツンコツンコツン……。
私はこの時、自分で返事をしたような気がしない。何だか鳥ともつかず、獣《けもの》ともつかぬ奇妙な声が、どこからか飛び出して、室《へや》中に響き渡ったように思った。それと同時に頭の毛が一本一本にザワザワと走り出したように感じたが、そのザワザワが消えないうちに、入口の扉が半分ばかり開かれると、ガタガタと動く真鍮《しんちゅう》のノッブの横合いから、赤茶色のマン丸いものがテカテカと光って現われた。それは最前カステラを持って来た老小使の禿頭《はげあたま》であった。
「……ヘイヘイ……御免なさいまっせい。お茶が冷えましつろう。遅うなりまして……ヘイヘイ……ヘイ……」
と云い云いまだ湯気を吹いている新らしい土瓶を大|卓子《テーブル》の上に置いた。そうして只さえ弓なりに曲った腰を一層低くして、白く霞んだ眼をショボショボとしばたたきながら、皺だらけ
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