が尽きたのだ。人間も学者も同時に御免|蒙《こうむ》って、モトのアトムに帰りたくなったのだ。当の相手の前に一切をタタキ付けて……」
「……………」
「……こうした吾輩の現在の気持は、無論、若林の目下のソレとは全然正反対でなければならぬ。若林はあくまでもこの実験を固執して徹底的に吾輩と闘うべく腰を据えているに違いないのだ。……殊に若林は自分自身が結核に取付かれて、余命|幾何《いくばく》もない事を知っている。……だからこの事件の最後の結論の発表を引受るべき君の精神状態が、今朝《けさ》から回復しかけている事を見て取るや否や、頭を刈ってやったり、大学生の服を着せたり、彼女に引会わせたりなぞ、いろんな事をして、出来るだけ早く君自身を呉一郎と認めさして、自分の味方に取付けて、都合のいい発表をしてもらおうと焦燥《あせ》っていたのだ。……否……現在でも君と吾輩の上下左右に、眼に見えぬ網を張詰めて、グングンと自分の方へ手繰《たぐ》り寄せつつあるのだ」
「……………」
「……しかし吾輩は元来そんな面倒な闘いにお相手になる必要はなかったのだ。どうせ自分自身は電子か何かになって、箒星《ほうきぼし》のお先走りでも
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