た二人の希望である。……だから吾輩と若林とは、云わず語らずのうちに協力一致して、この事件に重大な関係を持っている君の頭脳《あたま》を回復すべく、全力を挙げているのだ。……今にも君が君自身の過去の記憶を回復して、以前の意識状態に立帰り得たならば、必ずやこの仕事の後継者が、君以外に一人もいない事を、明白に自覚してくれるであろう。そうして君が死ぬ程の驚愕と感激の裡《うち》に、この空前絶後の大研究の発表を引受けて、全人類を驚倒、震駭《しんがい》させてくれるであろう……その発表によって太古以来の狂人の闇黒《あんこく》時代を一時に照し破り、全世界のキチガイ地獄をドン底から顛覆、絶滅させて、この唯物科学万能の闇黒世界を、一斉に、精神文化の光明世界にまで引っくり返してくれるであろう。……と同時に、それに引続いて来るべき精神科学応用の犯罪の横行時代を未然に喰い止めて、彼《か》の可憐の一少年呉一郎その他の犠牲を、無用の犠牲として葬り去らないのみならず、全人類の感謝と弔慰とを彼等に捧げさしてくれるであろう……そうして最後に……永劫《えいごう》消ゆる事のない極地の氷のような『冷笑』を、吾々二人の死後の唇に含ま
前へ
次へ
全939ページ中854ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング