って確実に彼をモトのところへグングンと引戻して来たのだ」
私は椅子から飛上って部屋の外へ逃出《にげだ》したかった。けれども私の身体《からだ》は不思議な力で椅子に密着して、ひたすらに戦慄を続けているばかりであった。耳を塞《ふさ》ぐ事すら出来なかった。その私の耳の穴へ正木博士のカスレた声が、一句一句明瞭に飛込んで来た。
「……かくしてこの実験の進行に関する第一の障害……T子の生命《いのち》は、完全に取除《とりのぞ》かれた。WとMとIとの過去を結び付け得る唯一人の証人……Iが誰の児かという事を的確に証言し得ると同時に、この恐ろしい科学実験の遂行者を一言の下に立証し得るであろう『生き証拠』のT子は、予定通り完全な迷宮の中《うち》に葬り去られた。続いて起る問題は、この実験に必要な第二の条件……即ち……Mがこの九州帝国大学、医学部、精神病科教室の教授の椅子に座ることであった。これは換言すればこの実験の結果として、万一追求されるかも知れないであろうその事件の下手人の所在を晦《くら》ますためにも……お互いの秘密を完全に保護して、絶対の安全を保つためにも……又は、そうして適当な時機を見計らってその犯行
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