《あが》る。その合間合間には喘息《ぜんそく》が起る……といった調子でなかなか忙がしかったのであるが、しかしその態度は依然として悠々たるもので、彼《か》れもこれ一《ひ》と昔の夢という風に、明暮れ試験管と血液に親しんでいた。
……が……しかし又一方にMも困らなかった。そうしたWの帰朝後の態度から、T子|母子《おやこ》が福岡市を中心とする一日旅程以内の処に住んでいるに違いない事をアラカタ読んでしまっていた。……のみならずT子はまだ三十になるかならずで、相変らず美しいとすれば、どこに居るにしたところが、多少の噂の種にはなっているに相違ない。又その子のIも、父親は誰だかわからないまま無事に母親の膝下《しっか》で育っているとすれば、格別の事情がない限り、Mの計劃通りに母方の姓を名乗っている筈である。年齢は私生児の事だから届出が後《おく》れているかも知れないが、多分、尋常校の三四年程度であろうという事が帰朝当時から見当が附いていた。あとは足まかせの根気任せというので、福岡を中心としたWの出張先を第一の目標として、虱殺《しらみつぶ》しに調べて行くと、果せる哉《かな》、帰朝後半年も経たぬうちに、直方小
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