、その行衛を見逃がすようなWでは絶対にない筈である。……と同時に、もしそのWが、海外に留学するような事があれば、それは取りも直さずWが、T子|母子《おやこ》を確実に掌握し得た証拠になる。換言すればT子|母子《おやこ》がどこかに定住して、当分、動く気遣《きづかい》はないという見込みがハッキリと付けばこそ、安心して留学出来る訳で、そうとすれば又、そのWが帰朝するという事は疑いの眼を以て見れば何かしら、その点に関するWの或る種類の心配か、又は或る種の計劃を発動させる時季が来た事を意味していないとは断言出来ないであろう。今一つ言葉を換えて云えば、MはWのそうした行動によって、T子|母子《おやこ》の行衛を割合に楽に探り出す事が出来る訳で、海外留学中のMが絶えず内地の新聞や官報に気を附けていたというのは、そうした注意が必要だからであった。
……が……しかし、Wがそんな気振《けぶり》でも見せるような男でない事は無論であった。帰朝後はチョットした出張以外には福岡を離れる模様もなく、毎日毎日大学に腰弁をきめ込んでいるうちに、間もなく助教授から教授に進む。引続いて色々な難事件を解決する。名声はいよいよ揚
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