ものはみんな焼き棄てたり、室見川《むろみがわ》へ流したりしてしまいました。
……そうしてイヨイヨその刺繍の作り方を自分の手に覚え込んでしまいますと、引剥《ひきはが》した紙を旧《もと》の通りに修繕《つくろ》って、絵巻物を御本尊様の胎内に返してしまいましたが、盗む時よりも返す時の方が、よっぽど怖う御座いました……そうして、それから間もなく福岡へ出て来たのですから、絵巻物はやっぱりあの、如月寺《にょげつじ》の弥勒《みろく》様の胎内に在る筈です。
……けれどもこうして吾児《わがこ》というものが出来て見ますと、つくづくあの絵巻物の恐ろしさがわかって来ました。姉のY子でも私のように男の児を生んで、あの絵巻物の在る事を知っているとしましたならば、同じ思いをするにきまっております。虹汀様が、あの絵巻物を焼かれなかった未練なお心を怨むにきまっております。
……とはいえあの絵巻物が在るという事を知っている者は誰もいないのです。たった私一人だけなのです。ですから私の一存で、あの絵巻物を貴方の御学問の研究材料に差上げますから、私の家の血統《ちすじ》を引いた男の児にだけ祟《たた》るという、その恐ろしい、不
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