の因果応報の実物に悩まされて、自殺まで決心させられている。その運命の皮肉さ……笑う力もない事を併せてここに告白しておく。
……とはいうものの……その時のMが、どうしてそんな将来を予知し得よう。この伝説が含んでいる精神科学的の魅力と、T子の美貌に引かされつつ、学術のためならば後事《あと》はドウなっても構わないという、最初の意気組をそのままに盲進した。そうして半年足らずの間T子と同棲していると、そのうちにT子の姙娠の徴候がだんだんと著しくなって来た。そうしてその年の暑中休暇に入ると間もなく、明らかに胎動が感じられるようになったのであるが……しかも……この胎動こそは、それから後《のち》二十年の長日月に亘って、WとMの二人の運命を徹底的に掌握しようと藻掻《もが》いている或るもの……運命の魔神とでも形容すべきものの胎動であった。WとMの二人の心臓をガッシリと掴んで手玉に取ろうと焦燥《あせ》っている胎児のワインド・アップであった。……精神科学の研究を中心とする血も涙も、義理も人情も超越した邪妖劇……長い長い息苦しい、毒悪不倫劇の中心的な主役を引受けて、登場俳優を片端《かたっぱし》から生死のドタン
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