なおここに今一つ、是非とも告白しておかなければならぬ事がある。というのは外《ほか》でもない。最早《もはや》察しているかも知れないがWの血統《ちすじ》と、現在の健康状態に関する秘密を、手紙でT子に密告したのは外ならぬ恋敵のMであった……という事である。これは依然としてT子に対する愛着と、この研究に関する未練を棄て得なかったMが、Wと別行動を執《と》って、T子以外に絵巻物を隠している者がいはしまいかと、色々探索しているうちに、今云ったような村人の噂からT子の心中を推測して、もしやと思って試みた、反間苦肉《はんかんくにく》の密告が図星に当ったものであるが、むろん、これは卑怯とも何とも云いようのない所業《しわざ》で、Wに対して弁解の余地は毛頭《もうとう》ない。況《いわ》んやその手紙をチャンスとして又もT子に接近し初めたに於てをやである。……が……しかし……この時のMの所業《しわざ》の卑怯さが、それから後《のち》、今日までのMの生涯に、どれ程の恐ろしい代償を要求しつつ祟《たた》り続けて来たか……という事実を回顧すると、実に身の毛も竦立《よだ》つばかりである。『因果応報』の研究に志して来た者が、そ
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