と、T子のこうしたふしだら[#「ふしだら」に傍点]が、決して尋常一様の浮気から出たものでない事がわかると同時に、その薄情な態度も強《あなが》ちに咎《とが》められなくなる。その浮気の裡面には呉家の血統の継続という痛々しい、悲しい観念が有力に動いていた。それが魔風恋風《まかぜこいかぜ》以来の自由恋愛の風潮に乗って具体化されたものに外《ほか》ならない。かよわい女の判断ながら、出来るだけ人格の正しい、健康な血統《ちすじ》の子孫を設けたいものと、一心に憧憬《あこが》れ願っていた心情がハッキリと首肯《うなず》かれる訳で、T子が家出をした当時に、その界隈の人々が『どうせい自宅《うち》に居て婿どんを探しても、旅烏《たびがらす》のGぐらいの男が関の山じゃろうけに』というような冷評的な噂をしていた事実も、やはり、こうしたT子の心情を裏書きしていたと云うべきであろう。同時にT子が如何に純情と、理智とを兼ね備えた、怜悧そのものともいうべき性格の持主であったかという事実も首肯《うなず》かれる訳で、斯様《かよう》な点から見るとT子は生れながらにして不幸薄命な女性であったとも考えられるようである。
 ……それから、
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