単純ではないらしい。事によるとその目的は絵巻物かも知れない。そうしてその絵巻物を欲しがる目的は……といったような漠然たる疑いを抱くようになったものらしいが、しかし、そんな疑いを抱いている気ぶりも見せないように気を付けていたので、流石《さすが》のWも歯が立たなくなった。全く立往生の姿にされてしまったらしい。……のみならずその中《うち》にWは又、それ以上の手厳しい打撃を受けて、涙を呑んで退却しなければならぬ破目《はめ》に陥った。すなわち絵巻物探索の唯一無上の手がかりとして、手を換え、品を変えて機嫌を取っていたT子から、抵抗不可能ともいうべき自分の急所に、思いもかけぬ肘鉄砲を一発ズドンと喰わされたのであった。
……というのは別の事でもない。T子が相手の恋を敵本主義の裏打ちものとウスウス感付いていた事は、今話した通りであるが、今一つにはそのWが、甚しい肺病の家筋で、本人の体質がその事実を遺憾なく証明している事を、その頃になって初めて聞き知ったからで、この点についてWはT子に対して全然、事実を偽っていた事が、同時に判明したからであった。……しかも、これは余談ではあるが、こうした事実に照してみる
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