場にまで飜弄しようとしている運命の魔神の、お目見得《めみえ》の所作に外ならなかったのだ。……ところでその無言の所作が、開幕の皮切りに、大衆に投げかけた疑問というのは『私は誰の児《こ》か』という質問であった。……しかもその当時から今日までの間に、この質問に対して与えられた回答は、有形的にも無形的にも絶無《ノン》という事になっているのである。
……無論、この質問に対する回答はWも、Mも持合せている筈である。しかしその回答が、果して確実、動かすべからざる事実に立脚したものかどうかという事は、それから後《のち》に『血液型による親子の鑑別法』の大家となったWも、調査が出来ないでいる筈だ。自分の血液もMの血液もウッカリ取る訳に行かないからね……のみならず一方には、この事実を、何人《なんぴと》よりも明白に証言し得るであろう胎児の母親のT子も、そんな調査が出来ないでいるうちに所謂《いわゆる》『死人に口なし』となってしまって、あとには何等の証拠も残っていない。せめてT子が生前に、その児の父親と認めた人間の苗字を、その児に附けて、何かに書き残してでもいるならば文句もなく面倒もない筈であるが、遺憾ながらソ
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