強く肩をユスリ上げた、自分でも意味がわからないままに……。正木博士もその時にチョット沈黙したが、その沈黙は私を無限の谷底に陥れるように深く、私の胸を打った……と思うと正木博士は又、言葉を続けた。
「……そうと気が付いた時に吾輩はゾッとしたよ。おのれ[#「おのれ」に傍点]と思ったが弁解の余地がない。しかも呉一郎の血液を検査して誰の子かを決定する法医式鑑定法の世界的権威はWの手中に在る」
 正木博士は南側の窓の所で向うむきにハタと立止まった。悄然とうつむいて唾液《つば》を嚥《の》み込んでいるように見えた。
 私は又もわななき出した片手を額に当てた。湧き起り湧き起りして来る胴ぶるえを押え付け押え付けしながら片手でシッカリと膝頭を掴んでいた。

 正木博士はやがて太い溜息を一つした。恰《あたか》も窓の外を見るのを恐れるかのようにクルリとこっちを向いた。……黙って……うつむいて……心の動揺を落付けるかのように、大|卓子《テーブル》を隔ててコトリコトリと私の前を横切って行った。そうして北側の窓の処で今度は直角に向《むき》を換えて、窓側とスレスレに往復し初めたのであったが、その心持ちうつむいた姿は、
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